1st mission ~Walpurgis Night~

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 眼下に広がるのは廃墟と化したかつての都市。その一角に一箇所だけ真新しい建物がある。簡素な格納庫のような造りだ。おそらくあれがテロ組織『ヴァルプルギスの夜』の拠点。  俺はその建物に接近する為、フェンリルのブースタに意識を向けた。するとその思考に連動してコアの背部が変型を開始する。そしてコア内部の機構が、防御の為に機体の周囲に展開しているコジマ粒子(プライマルアーマー)を吸収し始める。この間僅かコンマ数秒。さらに、その吸収したコジマ粒子を内部で爆発的な推進力に変換し、その推進力が機体を超高速で飛翔させた。これがネクストのOB(オーバードブースト)だ。  クーガー社製のOBの推力は凄まじい。フェンリルは俺の“思考”から一秒も経たないうちに音速を突破した。そして一気に彼我の距離を駆け抜ける。  Gジェルによって対G機構が構成されているとはいえ、身体に掛かる負荷は膨大で俺は息が詰まった。さらにAMS適性の低さらか来る操作性、機体制御の悪化も無視できるものでは無かった。俺の適性では、全神経を駆動系に向けて機体の軌道を安定させるのがやっとだ。一瞬たりとも気を抜けない。  目標地点に接近するまでの僅かな時間が恐ろしく長い。俺にとってそれは、体感的に長い苦痛伴う事を意味していた。  一定の距離まで侵入した俺は、フェンリルのOBを停止させ通常のメインブースタに切り替えた。大推力のOBとは違い、低負荷で低推力、垂直上昇力に特化したそれは扱いがたやすく、それ故俺にも楽に制御する事が出来る。
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