255人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はフェンリルを高度一○○○メートルまで一気に上昇させた。此処からなら遮蔽物に隠れたノーマル部隊の姿もよく見える。
俺は隊長機と思われるノーマルの足元に一発、スナイパーライフルの弾丸を叩き込み、彼等の行く手を阻んだ。そして全回線を開いて通信を入れる。
「こちら独立傭兵、フェンリルだ。レイヴン、貴殿等は既に捕捉されている。悪い事は言わない。投降しろ。こちらとしても、無駄な殺生はしたくない」
それは俺の本心でもあった。
そんな俺の唐突な投降要請に驚いたのか、ノーマル部隊はその進行を止めた。進行を停止した部隊は明らかに動揺していた。だが、その部隊の隊長は違った。長年の経験からなのか、動揺する部隊を通信ではなく手信号(ハンドシグナル)だけで鎮め、こちらに敵意を向けて来た。
「そんな手に、乗るとでも思っているのか……ッ」
嗄れた男の声が俺の頭にこだまする。
「リンクス風情が驕るなよ……ッ!!」
よし、答えがあった。俺は思った。怒りの篭った声だったが、無意味に攻撃を仕掛けて来ない辺り、冷静な頭の持ち主のようだ。上手くいけば情報だけでなく、彼等の命も助けられるかもしれない。
「もう一度言う。投降してくれ。何故こんな事をするんだ?こんな戦い、無益でしかない」
「リンクスである貴様に、我等の誇りは解るまい。それに、例え投降したとしても法に裁かれるだけだ。結局、未来等……何処にもありはしない。ならば、自ら切り開くより他には無いのだッ!」
最初のコメントを投稿しよう!