1st mission ~Walpurgis Night~

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 俺はフェンリルを再度上空へと飛翔させる。狙いは部隊の“眼”。電子戦型ノーマルだ。  俺はフェンリルのOB(オーバードブースト)を作動させた。一気に部隊後方に回り込み、そのまま各個撃破する策だ。  数瞬後、フェンリルは音速を突破している。だが、先程の“巡航”とは違い今回は“戦闘機動”だ。肉体的負荷は元より、精神的負荷も数倍以上掛かる。  俺は大口径スナイパーキャノンの回避とフェンリルの軌道を安定させる事だけに集中する。本来なら、さらにジェネレータのコンデンサ残量にも気を配らなければならなかったが、そんなものを気にしている余裕は、今は無かった。  音速を超えて飛翔するフェンリルは、まさに荒れ狂う狼のようで、実際制御するのがやっとの事だった。  俺が速度と格闘している隙をスナイパーは見逃さない。超音速とはいえ、ほぼ一直線で加速するフェンリルは、熟練した彼等にとって“ただの的”でしかなかった。  狙い澄まされた一撃がフェンリルを襲う。ただでさえOB(オーバードブースト)の使用で薄くなっているPA(プライマルアーマー)では、殆ど弾丸の威力を減衰させる事が出来ない。さらにこちらの相対速度も相俟って、フェンリルの右肩に着弾した弾丸は膨大な衝撃を伴うものとなった。  それでも俺は……フェンリルは止まらない。態勢を崩しながらも、その莫大な推力に物を言わせ一気に突っ切った。  フェンリルは電子戦型ノーマルの頭上を飛び越え、急速旋回し両手の武器を乱射する。着地や照準は二の次だった。
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