1st mission ~Walpurgis Night~

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 フェンリルの急激な機動に対処できず、電子戦型ノーマルは背を向けたままライフルとスナイパーライフルの弾丸を受けた。  避けられはしなかった。電子戦型ノーマルは一瞬の沈黙の後にコア部から爆散する。これで残りは六機となった。  俺はそれを見届ける事は出来なかった。要するにそれどころでは無かったのだ。各部の緻密な被害状況が、AIによって俺の頭へ直接報告されて来る。だから俺は、急いでその事後処理を“思考”する事を余儀なくされていたのだ。  右、肩部四番ロールギア破損、メインギアは空転……四番、メインギア出力カット。残りのギアに余力を回せ。肘部のバンパーも疲労の蓄積が激しい……緊急冷却措置で何とか凌ぐしかない。左腕部稼働率三○パーセント低下……  フェンリルの右腕はあまり使い物になりそうになりそうに無かった。  だが、そちらにばかり気を取られている場合では無い。今は戦闘中なのだ。要するに戦闘終了まで動けば良い。修理は帰ってからいくらでも出来る。だが、先ずは帰る事が最重要事項だ。しかしながら、此処で敗退等しては今戦っているレイヴン達に申し訳が立たない。だから、絶対に負けるわけにはいかなかった。彼等との約束を果たさなければ……いや、必ず果たすのだ。この戦闘、是が非でも勝たなければならない。  俺はフェンリルの右背部レールキャノンを再度展開させる。  電子戦型ノーマルが沈黙してから、この間およそ三秒弱。スナイパー型ノーマルは未だこちらに旋回を終えていない。狙い通りだ。俺はレールキャノンとスナイパーライフルを一気に撃ち放った。
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