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「その……なんてか……あまり気に病むなよ?」
パラベラムは慎重に、言葉を選ぶように言った。些細な気遣いだったが、俺にはそれが無性に有り難かった。
「ありがとうパラベラム。だけど、気に病んでいる暇なんて何処にもありゃしないよ。やれやれ、また約束事が増えてしまった。これから、ますます死ねないな。全く、頼りにしてるぜ?名オペレータ」
「全くだ。フフッ何てな。今からそちらに回収の為降下する。そうだな、場所は……よし、約三キロ先に開けた場所がある。そこにしよう」
俺は了解、とだけ言ってパラベラムとの交信を終えた。
合流地点(ランデブーポイント)までの道程、俺はアネルから送られて来たメールを読む事にした。
――灯を消してはならぬ。僅かな光も闇を照らす。世界は夜空に支配されている。見上げよ闇はそこにある。だが、夜の支配者は闇では無い。支配者は常に我等を監視している。だから夜からは逃れられない。ヴァルプルギスの夜からは逃れられない――
何だこの内容は……?俺は訝しんだ。まるで意味が解らない。いや、何と無くは解るが、何を伝えたいのかが解らないのだ。おそらく監視されているから、直接的な表現は避けたのだろう。しかし、どういう意味だ?
《ヴァルプルギスの夜を支配しているのは企業では無い!ヴァルプルギスの夜は企業すら利用する。何故ならその支配者はつ……》
ふとスティークが最期に口にした言葉が頭を過ぎった。
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