Welcker tells nothing

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 ヴェルカ隊長はリンクスだった。それも特級の。カラードランクは4。これは、独立傭兵と呼ばれる企業に所属しないリンクスとしては最高位の順位である。  元レイヴンである彼のリンクスとしての登録名は『レイヴン』。リンクスとなった今でも“烏”としての誇りをその名に託しているのだ、とヴェルカ隊長は語っていた。  荷支度を終え、私物が無くなった部屋はやけに広く見えた。とはいえ、荷物は片手に納まる程度しかなかったが。  暫くぼけっとしていると館内放送が流れた。 『連絡します。サシャ・サンドリオン、中央管理部まで出頭してください。繰り返します。サシャ・サンドリオン……』  サシャ・サンドリオン。俺の名前だ。中央管理部は、この施設のお偉いさん方がいる部所だ。そこに呼び出されるという事は、つまり、とうとうお別れの時が来たようだ。俺は自分の部屋“だった”部屋と宿舎に別れを告げて、中央管理部へと急いだ。あそこの人間は時間に五月蝿い。  幸い、宿舎と中央管理部はそれ程離れてはおらず、数分で辿り着く。  窓口の女性職員に自分の名を告げると、第三会議室へ行くよう指示される。しかし、管理部に縁の無い俺は第三会議室の場所等解らず、結局案内してもらう事になった。
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