8人が本棚に入れています
本棚に追加
カランカラン…。
少し古めかしい鐘の音が静かな喫茶店に来客を告げる。
「いらっしゃい」
野太く、少々ぶっきらぼうな男の声が迎え入れた。
カタ…ン。
静かにドアを閉め、初夏の心地良い風の香りと共に入って来たのは女、30半ばといったところ。
「お一人なら好きな席へどうぞ」
グラスに水を注ぎながら促す。
女はニコリと笑顔を作って見せ、その言葉を受け流す。
キョロキョロと店内を見回し、視線を止める。
そのまま真っ直ぐ視線の先、通りに面したドーム状のガラス際の席へ向かう。
「あなたが真島さん?」
席に座りコーヒーを飲んでいる男に笑顔で尋ねた。
「そうだが何か?」
男はカップを置き、掛けていたサングラスを直しながら答えた。
最初のコメントを投稿しよう!