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「とりあえず向かい、いいかしら?」
「どうぞ」
女は静かに椅子を引き腰を降ろす。
座ると同時に、絶妙なタイミングで水の入ったグラスが差し出された。
「ご注文は?」
気付くと傍らに髭面の大男がニコニコしながら立っていた。
「そうね、注文が先ですね、すいません。コーヒーでいいわ」
「コーヒーにも色々あるんですが、とりあえずおすすめのホットでいいですね?」
「それで結構です。ありがとう」
ニコリと女が笑顔を作る。その合図で大男はカウンターへ戻って行った。
「で、俺に何か用でも?」
二人のやりとりが終わるのを見届けてから真島が聞いた。
「あなた、運び屋さんの真島さんでしょ?決まってここの店の窓際の席でコーヒーを飲んでる、青いサングラスの男の人って聞いたの。すぐに分かったわ」
「お待たせしました、どうぞ」
大男が静かに女の前にカップを置いた。
「ごゆっくり」
女は笑顔で応えた。
「確かに俺は運び屋の真島だ。では依頼、と言うことですか?」
真島は左目を覆い隠す様に、右手の親指でサングラスを持ち上げた。
「そうなの、是非あなたに運んでほしい物があるの」
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