踊り子

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「渚」   夕暮れ時   「別れよう」   大好きな人からの言葉を訊いた瞬間、世界が止まった気がした    踊り子   帰り道。いつもは真っ直ぐ帰るかどちらかの家に行くのに、今日は違った 芦ノ湖に寄ってみないかと誘われて、手を繋ぎながら向かった 向かってる途中に小さな子どもが坂道を走ってる姿に微笑んだり、裏の路地を通ったりした   芦ノ湖に着き腰を下ろし、出会ってから色んなことがあったねと語り合った なのに、どうしてこんなことになったんだろうか   「僕たちの恋愛って、踊り子みたいな感じじゃない? フラフラしてて、今にも躓いて転けそう」   シンジくんの黒髪が夕暮れに映えて綺麗に視えて、何だか泣きそうになった   「僕たちは踊り子で、片足で立ったまま付き合った、つま先立ちの恋」   「シンジくん…」   「渚、僕たち若すぎたんだ…恋を知るには早過ぎたんだよ」   「っ、シンジくん…っ!」   僕は苦しくなってギュッとシンジくんに抱き付いた シンジくんは何も云わずに背中に手を回してくれた。それがとても辛くて声を上げて泣いた   シンジくん…大好きなんだ…愛してるんだ…だから、ずっと傍にいて欲しい… 確かに、僕たちはつま先で立ちながら付き合ってきたと思うけど、狭い舞台でも良いんだよ、君だけを愛してるんだ…   「…シンジ、くん」   「どうしたの?」   優しい優しいシンジくん   「キス、して…?」   世界で一番大好きなリリン   「シンジくん、…好き」   「うん。僕も好きだよ」     * イメージは村下孝蔵さんの踊り子
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