1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
僕はしばらくそのコスモスに見とれてしまっていた。それは特に変わったとこもない普通のコスモスである。しかし僕はそのコスモスから目を離せずにいた。何故かそのコスモスからは温かいと言うか不思議な感じがするのだ。
ザッ…ザッ…
僕がコスモスに見とれていると秋桜荘の庭の方から足音が聞こえてきた。僕は足音の方に視線を向けた。
「あ…」
足音の主は角を曲がって僕の姿を見ると小さな声を出した。姿を現したのは可愛らしい少女であった。黒髪の長いストレートが印象的で着ている白のワンピースがより一層彼女の可愛らしさを引き立てている。歳は僕と同じか年下かといったところである。
「…えっ…と……どちら様ですか?」
コスモスに続いて少女にも見とれていると少女の方から声をかけてきた。
「あ、僕は上原優凪といいます。今日からここに住むことになりました」
「そうなんですか! あ、そう言えば竹井さんが今日新しい入居者が来るとか言ってたような…あなたのことだったんですね!」
軽く自己紹介すると少女は嬉しそうに手を合わせて言った。
「よろしくお願いしますね! えっと…上原さん。私は笠原結和(カサハラ ユイナ)っていいます」
「あ、こちらこそよろしくお願いします」
笠原さんが頭を下げてきたので僕も慌てて頭を下げる。彼女のお辞儀に合わせてサラサラと流れる長い黒髪に僕はまた見とれてしまっていた。
「…? どうかなされましたか?」
「あ、いや、綺麗な黒髪だなーって思って…」
…って、何言ってんだ僕はー!?
「え!? そ、そ、そうですか? …あ、ありがとうございます…」
笠原さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。初対面の女性に一体僕は何を言ってるんだ…
「え、え…と……な、中を案内しましょうか?」
まだ頬が赤いまま笠原さんは提案してきた。
「よ、よろしくお願いします…」
お互いに頬を赤らめて僕は笠原さんに続いて秋桜荘へと入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!