1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「ここで靴を脱いで下駄箱に入れてくださいね」
秋桜荘の中に入ると共用の玄関があった。なかなか綺麗な玄関で、横には花瓶にコスモスが飾られていた。
「へぇ…ここにもコスモスがあるんだ」
「そうです。綺麗でしょ…私、ここに来てからコスモスがすごく好きになっちゃいました」
「うん…僕も」
そう言いながら靴を脱いでとりあえず来客用の下駄箱に靴を入れた。
「玄関のすぐ先にある部屋が管理人室です。とりあえず挨拶しといた方が…」
「まぁ、そりゃそうだよね」
そう言って管理人室へと進む。玄関からは靴を脱いで5歩程でたどり着く近さだ。軽くドアをノックすると中から「どうぞ」と声が聞こえたので「失礼します」と言いながらドアを開けた。
中に入ると一瞬部屋を間違えたように感じた。管理人室のはずのその部屋は普通に人が暮らしている感じであったからだ。丸いちゃぶ台が中央にあって壁ぎわには1台のテレビと棚がいくつか並んでいる。そして部屋の隅には何故かランドセルがあった。
「あ、優君だね。待っていたよ。あと…何で結ちゃんが?」
座布団に座っている女の人が言った。歳は30~40代でちょっと茶色みかかった髪はパーマをかけているようだ。この人が母さんの友人の竹井舞(タケイ マイ)さんなのだろう。
「あ、え…と、門の所で会ったので…何か付いてきちゃいました」
笠原さんはアハッと苦笑いな感じに答えた。
「ふ~ん…。じゃあせっかくだから優君の部屋は結ちゃんの部屋の隣にしようか」
竹井さんはそう言って立ち上がると棚から鍵を取り出して僕に渡してきた。と言うよりせっかくだからってどんな部屋の決め方なんだか。
「はい、これが部屋の鍵だよ。分からない事は結ちゃんにでも聞いてね。以上」
「え…え?」
何か物凄い勢いに押されているような…。
「まぁ、軽い冗談だよ。とは言ってもこの秋桜荘には堅苦しいルールみたいなのも特に無いからね…生活してればそのうち分かってくるよ」
竹井さんは軽く笑いながら言ってきた。
「は…はぁ…」
「とりあえず部屋に行きましょ。私の部屋の隣で空き部屋って言ったら1つしかないし」
困惑していると笠原さんが提案してきた。
最初のコメントを投稿しよう!