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は誰の目にも、明らかな程そそりたっていた。 「ここ登るのか? 冗談だよな」 Bは、それには、答えず懐中電灯で、岩壁の前にある岩を照らした。 「あの岩を動かしてみろ」 「おい、こんな時に冗談は」 「いいから あっ岩壁の方へ押すんじゃないよ ゲームじゃないんだから 岩壁と垂直におすんだよ、ちょっと考えりゃあ、わかるだろう」 俺はBのもったいぶった態度に腹をたてたが、それでも渋々指示に従った。 しかし岩は、びくともしなかった。 「こんな無駄な事を何故させるんだ おふざけなら、絶対許さんからな こんな大岩いくら押したって う、動いた」 5メートルは、あろうと言う巨大な岩は勝手に一方向にづれて、その裏の出入口を、現した。 「仕掛け岩か」 Bは懐中電灯で出入口を照らしながら言った。 「その岩が扉とスイッチを兼ねているんだ 用心のために、簡単に作動しないように、なってるんだ さあ、行くぞ」 二人は岩壁の中に入った。 懐中電灯で照らすと中は空洞になっていた。 「通路になってるのか?」 「寺まで一直線で繋がっている。」 二人は注意深く先を懐中電灯で探りながら歩き始めた。 通路は一直線で続いていた。 二人は、しばらく何もしゃべらなかった。 突然Bが言った。 「お前、あんまり気分よくないだろう」 「いや、体調は普通だが」 「そうじゃなくてさ 俺ばかり、いろいろ知らされてるって事だよ」 「なぜなんだ」 「おれに多少高野山に対する予備知識が、あったからだ 理解が、あったからだ。 この仕掛けに付いてだって今どき隠す事もないだろうが、わざわざ表沙汰にもされたくないと言う気持がある。 それに、俺達ジャーナリストは情報を公開するのが商売だか、一方で公開しちゃいけないと考えれば絶対公開しない。 その辺のジャーナリスト魂を彼女は知っていた。 彼女の死んだご主人が新聞記者だったらしい」 「しかし俺も知ってしまうんだが」 「もちろん、単なる気分の問題だが」 Bに事情を聞き少し納得したものの、それでも、何となくモヤモヤした物が残った。 それは、やはりBに対する俺の対抗心から来るのだろう。 我ながら子供っぽい話である。 しかし、子供っぽいのを許してもらえれば、俺は少しBに対して優越感を感じている。 それは、彼女の最後の言葉を聞いたのは、俺だと言う事だ。
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