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E美の肩に掛けてやった。
「有難う、それより、貴方もズボン履いたら?」
俺は、そう言ったE美の顔に自分の顔を近づけた。
「ヤニ臭いわよ」
「それも、またいい」
俺はE美の唇を奪って、そのまま押し倒そうとした。
しかしE美はあがらった。
「今日は、もうダメよ」
「わかったよ。」
「いつも聞き分けいいわね、たまには、無理してみたら?」
「いいのか?」
「今日はダメ、その気にならないの」
「このところ少しブルーじゃないか」
「わかる?」
「何かあったの?」
「監督がね、ここのところ仕事してないのよ」
「F監督か、」
「難しい人だから、最近の風潮を嫌って現場から遠ざかってるみたい」
「あまり、評判いいって聞かないから、ほされてるだけなんじゃないかな、いろいろ生活面の問題も指摘されてるし」
Fは無頼で有名であり、女性問題も抱えている。
しかし一方で公私は、はっきりした男だった。
「なんて事言うのよ、貴方にF監督の何が分かると言うの?」
E美はFに見出だされてモデルから女優になった女だ。
義理がたいE美は、どんなに忙しくてもF監督の仕事を優先して来た。
それが彼女が、伸びられない理由でもあった。
「ごめん、ごめん」
「わかってくれればいいの、F監督がいなければ、私なんて盛りの過ぎたモデルにすぎないのよ」
「しかし、少し妬けるな、結構ほれてたりして」
「恋愛か、考えた事なかったな、尊敬とか感謝とか先にたっちゃて。
確かに、何かビビビって来るとこあるわよね。
あのアイシャドーの目で見つめられると」
Fはギャグマンガに出てくる英国情報部員の様にアイシャドーをしている。
「おい、これ以上勘弁してくれよ」
ただでさえ複雑なのに、まして天才監督にはいられたら一般人にはぶが悪い。
E美はころころ笑った。
「大丈夫よ、とても相手にしてもらえないから」
E美は冷蔵庫からコーラを一本出して来るとコップに注いだ。
「これは君ね」
そして、それを一口飲んだ。
「うん、おいしい」
今度はオレンジジュースを別のコップに注いだ。
「これはB君、」
そして、それも一口飲んだ。
「うん、いける」
E美は、2つのコップの中身を混ぜて一つグラスに入れた。
二つのサイダーが混じってどす黒くなった中でパチパチ弾ける。
「まるで、ケンカしてるみたい」
。
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