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目がぐるぐる回ってたし、吐き気もしていた。 だが一方で、これで、やっと終わるんだ。 考えてみれば奴との友情を取り戻す事が出来たし、大きな収穫を得た。(金銭的におお赤字だが) どちらが、かっても相手を祝福出来るような気がする。(その時に、なってみないとわからないが) 少なくとも、その後も友情は続くだろう。 しかし、突然俺の中に不安がよぎった。 その不安は、うち消そうとしても、うち消そうとしても広がり、やがては暗雲のように俺の心を包みこんだ。 何なんだこれは 何故気持が晴れない。 あの住職の法力が本物じゃないとでも言うのか? いや、違う だが不安は消えないどころか強まってる。 何故なんだ? 俺は何がなんだか、わからなくなっていた。 今まで味わった事のない理性と本能が、全く別の結論を出している状態だった。 理性は終わりをつげているのに本能は、はじまりを予見している。 しかし、俺の中には恐怖と同時に、おののきもあった。 それは学生時代のほんの一時期ぐれた時期に経験した集団のケンカに向かう時の興奮にも似ていた。 俺の中で、その戦きを喜んでる感じさえする。 人間とは不思議だ。 相反する感情が並立して存在する。 考えてみれば俺が、不安なのは、全く謎が解けていないからじゃないだろうか? 俺達のやった事は、住職の尋常でない法力をつかいビデオテープごと呪いを封印した事だった。 いってみれば強引な外科手術みたいなもんだ。 あぶない部分は問答無用で切り捨てる。 確かに有効かも知れない。 しかし本当に、それでおわるんだろうか? 完全に切りとれたんだろうか? もう再発しないんだろうか? 強引な外科手術には、そんな不安が、付きまとう。 それと同じように、このようなやり方では、もし取りこぼしが、あれば元の木阿弥になってしまう。 いや、それどころか、もっとますい事に、なるのかも、そうゆう不安が俺をさいなんだ。 何しろ何一つ謎は解けていないのだ。 いったい俺達を呪ってるのは、誰なのか? なぜ呪われなきゃならないのか? それにGさんの残した、いくつかの謎の言葉は、なんだ? 「魔」の後には、いったい何を言うつもりだったんだ。 最後に言った女に気をつけろとは、まさか? 俺にとって、それだけははずかしめたくないものだった。 それを疑う事は俺のすべてを疑う事と同じになる。
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