宿命

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前提にしているため安全に出来ている。 しかし、それでも破壊力は見た目を遥かに越えている。 不利な状況から一度に逆転するのが柔道の怖さだ。 しかし俺は残念ながら柔道の達人ではない。 あっと言う間に、奴に逆手を取られた俺は、意地でも簡単に降参するものかと思うのが精一杯だった。 しかし、予想に反して奴は、すぐ手を離した。 俺は素早く向き直りながら言った。 「情けをかけるつもりか?」 「先に情けを掛けたのは、お前だろう」 気がついていやがった。 「お互い情けを掛けて すっきりしねえ どうだ、殴り合いでケリをつけねえか?」 「もう、やってるじゃねえか」 「お互いブロックなしで身体で受けるってのは、どうだ」 ヤンキーがよくやる意地の張り合いだ 根性比べと言う奴だ かなり痛いだろうが、もちろん承諾した。 痛さを恐れるより、やりあって、すっきりしたい気持の方が強かったからだ。 しかし、もし嫌でも意地にかけても、ひくわけには、いかなかった事も事実だった。 「それじゃ、いくぜ」 「ああ」 俺が返事するなり、奴の鋭い右拳が俺の左胸下に、突っ込まれた。 声を上げる事も出来ない痛さだった。まるで空気を吸うのと吐くのを同時にやったような苦しさが俺を襲った。 俺はフラフラと前によろめいた。 呼吸困難になり、このまま倒れたら、どんなに楽かと誘惑に駆られた。 その隙を奴は逃がさなかった。 全体重を拳に乗せてフィニッシュの一撃を放って来た。 その時俺の中に再び闘志が生まれた。 俺は奴の拳をブロックして反撃に移る心づもりだった。 しかし、考えて見ると、それはルール違反だった。 だが何もしないと、、奴の強烈な2発目を同じ場所にくらってしまい、敗北する可能性がある。 そんな事を考えてるうちに、奴が近づいてくる。 これで終わりか? だが俺の前で奴はのけぞった。 俺が思わず繰り出した右足が下腹部にカウンター的に、当たったからだ。 これはブロックじゃないのか? 奴は反則だと言ってこないか心配になった。 しかし奴は抗議をするかわりに、突っ込んで来た。 タックルをもらって俺は思わず後ろに下がった。 しかし、奴の背中に隙が出来た。 俺はそこに、肘鉄砲をぶちこんだ。 「うっ」 奴が呻いた。 しかし奴は怯まず胴締めを掛けて来た。 今度は俺がカエルのように情けない声を上げた。
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