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おあつらえならと俺は腰の入ったパンチを放った。
しかし奴はそれを待っていた。
パンチをよけた(ルール違反)奴は身体を右に開き、俺の出足に自分の足をひっかけた。
俺は一度にバランスを失い前に、つんのめった。
まずい!これでは、奴にバックを晒す事になってしまう。
今度は奴も容赦しまい。
俺は仕方なく腰を回して奴の方を向いた。
無理な姿勢に腰がおもいっきりグキっとなったが倒れて奴にバックを晒す事だけは避けられた。
やつは、俺の意表をつく行動に混乱した。
俺は、その隙を逃さなかった。
俺は、そのまま奴にかぶりついてやった。
奴はバランスを失いよろめいた。
しかし奴も倒れは、しなかった。
バランスを欠いた姿勢から俺にしがみついてきた。
今度は俺がバランスを失った。
しかし俺も倒れるわけにはいかなかった。
結局俺たちは相手のバランスを崩しながらワルツでも踊るように、或いは駒のようにグルグルと回り勢い余って上屋の柱に激しくぶつかった。
エキサイトとして拳を振り上げた俺達は嫌な音に動きを止めた。
それはボキっと言う何かが壊れる音だった。
「なんだ、あの音は」
「ん?」
俺達が気付いた時もう上屋は崩れはじめていた。
俺は急いで上屋の外へ飛びだした。
奴も飛びだそうとしたが奴の前に磔が落ちて来て対応が遅れた。
俺は上屋から離れながら奴をよんだ。
「早くこい
やばいぞ」
「ああ」
奴はキョロキョロしなから磔をよけて上屋から出ようとした。
しかしその時上屋全体が崩れはじめた。
そして上にあった給水塔が奴に襲いかかるように倒れて来た。
「危ない」と俺が声を上げる前に同じ言葉を甲高い声がしゃべった。
俺は思わず顔を手で被った。
すさまじい音がして、地面が大きく振動した。
俺は恐る恐る目を開けた。
しかし意外にも奴は落下地点から少し離れたところで無傷でいた。
『よかった』
しかし俺は奴の様子が尋常でない事にすぐ気がついた。
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