宿命

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看護師は一度たじろいたが、相手にしてもしょうがないと思ったのか無言で行こうとした。 しかし、Bは追いすがった。 「答えて下さい 俺は彼女に何も出来ないんですか」 「手術の無事を祈って上げてください」 Bは看護師の前に廻ると土下座した。 「彼女は俺をかばってこうなったんです おれが何もしないわけには、いかないんです。 お願いです、一滴でもいいから俺の血を彼女に」 Bは頭を床に何度もこすりつけた。 看護師は困惑しきっていた。 俺はやむを得なく口を出した 「B、気持はわかるが」 俺は奴の肩を叩いた。 奴は俺の手をはね除けた。 「お前の血だけで満たされてたまるか あいつは俺の物でもあるんだ」 Bの目は座っていた。 俺は思わず手を引いた。 看護師きっぱり言った。 「このままでは死にますよ、いいんですか?」 Bは、そのまま頭を抱えて崩れた。 俺には掛ける言葉も見つからなかった。 しかし、同情は起きなかった なぜなら あれは、もう一つの俺だからだ 自分に同情はかけられない それでは惨めすぎる 『均衡を保っていたやじろべえが神の悪戯で俺の方に傾いた しかしそれは恐怖と悲劇のプレリュードだった』
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