破滅のプロローグ

2/6
前へ
/113ページ
次へ
俺が輸血を行ってる間に尋常でないBの行動はエスカレートして行った。 例えばこんな事が…・ 血液検査室の前で頭を抱えていたBは何かきずいて突然たちあがり、検査室の受付窓口に首を突っ込んだ。 「すいません」 多数の試験管の立ち並んでいる実験テーブルに向かい、シャーレを顕微鏡にセットしていた臨床検査技師は、もう用が終わったはずの人間の訪問を少し怪訝に感じたが、それでも作業を中断して、検査機器のゲージを確認しがてら窓口まで対応に来てくれた。 「なにか?」 Bはいかにもばつが悪そう顔をして言った。 「あの忙しいところ、まことに申し訳ないんですが私の血を今一度検査願えないでしょうか?」 「…・」 こんな事言う人間は初めてだった。 まるで、痛くもない腹を探られたような怒りが彼の頭に込み上げてきた。 しかし、こう言う場合の対応もちゃんとマニュアルにあった。 彼は安心させようと、ひきつった作り笑いで答えた。 「大丈夫ですよ 精密な機械で何度もチェックしてあります ビデオもとってありますし」 「じゃあ見せて下さい」 「え?いや、ビデオは何かあった時の証拠で」 「何かあったら間に合わないじゃないですか」 「そんな事は、まずありえませんよ」 「まず」 「いや、困ったな 今まで一度もそんな事有りませんでした」 「じゃあ、百パーセントないんですね」 「いや、神様じゃないんだから(まずい事いったかな) ちょっと何すんのあんた」 Bは血液検査室に無理矢理入ろうとした。 検査技師は必死にドアを押さえた。 「あと一回でいいんだ もう一回検査してくれれば納得する」 Bは乱暴にもドアに足を掛けて引っ張った。 他の検査技師もドアの方にきた。 「いい加減にして下さい」 「ここを開けてくれ 頼む、もう一回もう一回だけでいいんだ」 守衛が飛んで来てBの両腕を掴もうとした。 しかしBは狂人のように暴れた。 守衛はやむなく警棒を伸ばした。 しかしそれは止められた。 止めたのは院長だった。 院長は首を振って警備員に警棒をしまわせた。 Bは院長をみると土下座をした。 「Bさんでしたね 頭を上げて」 Bは院長の手をはね除け言った 「E美は俺の身代わりなんです その俺が何もしてやれないなんて、そんなばかな」 「わかりましたBさん とりあえず立って下さい」
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加