破滅のプロローグ

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院長はBを立たせると技師に言った 「もう一度検査してやれ」 「しかし前例が」 「この人の身にもなれ 今聞いただろう」 「わかりました じゃあどうぞ」 「さあ、検査を受けて下さい」 Bは涙を流さんばかりに喜んだ。 「ありがとうございます ご恩は一生わすれません」 「一生ってあなた まあ、とにかく検査を受けて下さい」 Bは検査室のドアをあけ技師にわびた その後振り返った。 「もう一つお願いがあるんですが」 「なんですか?」 「もし私の血が使えるならAの血と入れ替えて下さい」 「いっ入れ替える」 「じょ冗談です」 「そうでしょうね」 Bはいきなり自分の腕に噛みついて流血させた。 「ほら、真っ赤な血でしょう E美と同じ色です 使えないわけないでしょう」 Bは小躍りするように検査室に入って行った。 それを見て院長はがく然として、しばらく黙っていたが、やがてポツリと言った 「冗談、こんな時にも言えるものなのか」 とにかく手術が始まった。 観音開きのドアが開き全身青ずくめの手術着を着た院長が入ってくる。 「クランケ25才性別女性開放骨折、内蔵破裂が数ヶ所にも及ぶ。術しきは長時間に及ぶと考えられる以上」 俺達は手術室の前にあるソファーに座っていた。 俺は献血した左手をもんでいた。 Bは、項垂れていた。 突然足音がして中年の夫妻がキョロキョロしながらやって来た。 男性は背広にコートを着て女性は少しアップの髪型にプチドレスの薄手のカーディガンをはおり手に上着をたんで掛けていた。二人とも50代の品のいいサラリーマン風の夫妻だった。 「あの多田英美(E美)の手術室は、こちらでよろしいでしょうか?」 俺は答えた 「そうです、もしかしてご両親ですか?」 「そうですが、失礼ですが」 「あっあの」 戸惑ってる俺の横から英美の母親が口をだした。 「英美の」 父親は意味が、わかったらしい。 「ああああ これははじめまして」 「いえ、ご挨拶にも伺いませんで」 Bが、その様子を睨んでいた。 父親は、それに気がついた。 「あの人は」 「彼も英美の」 「ボーイフレンドか?」 「いや彼」 「そうか、それじゃあご挨拶ちょっと待て」 父親は俺達二人の顔を交互に見比べた 「お前は英美にどんな教育をしてきたんだ」
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