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突然ドアの開く音がしてみんなドキッとした。
しかし開いたドアは手術室ではなく、少し離れた小部屋だった。
みな何故か少しほっとした。
出て来たのは、院長と口論していた医者だった。
医師はつかつかと俺達の方に来た。
それを待ってたかの様に警備員が二人小走りで走って俺達に近づいた。
「院長命令です。
外へ出て下さい」
事務的な言い回しだった。
心配してついてる人間に対して、いくらなんでも冷酷だ。
例え俺達が多少行儀が悪かったとしてもでもである。
しかし俺達は医者のこの言葉を聞いた時微かな期待を感じた。
外へ出ろと言う事手術の続行を意味すると推定できる。
つまり、蘇生は成功したと考えられる。
しかしすかさず父親が尋ねた。
「あの娘は」
「手術は続行中です静かにしてほしいんですよ、手が滑ったら困るでしょうが」
なんて事務的で不人情ないいぐさだ、大丈夫ですと激励してやれないのか?
正にエリート官僚丸出しだ。
無頼な感じだけど人情味と信念にあふれる院長と反りがあうわけないなと俺は院長に同情した。
そんな酷い言い様でも父親と、両手を組んで祈っていた母親は涙を流さんばかりに喜んだ。父親は医者の手を両手で握って言った
「有難うございます」
「蘇生が成功しただけです、手術はまだわからないのに、あまり期待するとぬか喜びになるかもしれませんから」
て言うか、言いたい事は、わかるが他に言い方ないのかよと俺は思った。
俺達は警備員に腕を捕まれた。
もちろん騒ぎを起こしたんだから、俺には異存はなかった
しかし坂東は、どうだろうか?
大人しく従うか俺は心配だった
意外にも坂東は大人しく警備員に従った。
俺達は建物の外へ連れ出されてしまった
警備員は言った
「騒ぎを起こさないで下さい、今度は警察ですよ」
酷い言い方だが俺達には反論も出来なかった。
ふとみると夜の闇の中に携帯のメール受信ランプがついたままだった。
メールにきつい言葉が書いてあると思いさっきは見れなかった、しかし今は別の理由でみれない、これが最後の通信かもしれないと思うと気持が高ぶりすぎるのだ
俺は夜空を見上げた。
月がはっきり綺麗に出てるのが嫌に悲しかった。
さっき抑えた涙が月をぼんやりと濁らせた。
その光景の中に天の羽衣を着た英美が浮かんで来て寂しく別れの表情を見せた時俺は妄想を振り切った。
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