英美

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突然嗚咽が聞こえた 俺は、その方向を見た。 泣いていたのは坂東だった。 何故泣いているのか? それはすぐわかった メールを見ていたからだ しかしメールの何に泣いたのかわからなかった。 その疑問がメールを見る決断のつかない俺の背中を押すような感じになった。 俺は坂東が泣く理由がどうしても気になり決断のつかないまま目を瞑ってメールを開いた。 そして、しばらくはメールの字が突然目にとびこまないように画面の部分を手で掴みながら、やっと目を開いた。 『ごめん(*^o^*)こんなおバカ娘だけど見捨てないでね』 意外だった、悪口雑言が書かれてると思った 涙がポロポロ出て止まらなかった。 俺達は少女のように抱きあって泣いた。 坂東が正常にもどりつつある事を俺は感じた あのメールのせいなのかもしれない 愛の力は偉大だと俺は思った。 しばらくすると建物の奥から母親がやって来た。 母親は深々と頭を下げた 少し涙目だった まさか? おれは心臓がとまらないほど脈打っていた。 「英美は助かりました。まだ面会は出来ませんが、ご心配をかけました」 おどかすなよ、俺はてっきり、思わず、そう言ってしまいそうになった。 俺達は母親の後ろに着いて行った。 手術室の前には、父親はいなかった。 おそらく別室で医者の説明を受けてるのだろう。 俺は手術室に飛びこんで英美に良くやったとキスしてやりたかった。 坂東も、そうだろう、しかし坂東は堪えていた。 坂東は正常に戻っていた。 一時的な錯乱だったんだろう、坂東は今心から取り乱した事を後悔してるに違いない 坂東は、そうゆう男だ、なんにしても良かった しかし本当に良かったのか? 誰かが俺の心のドアを叩いた。 結局のところ、英美が愛していたのは、坂東だったんじゃないだろうか? 確かに俺が、あの立場にいた場合やはり英美は飛びこんでくるかもしれない。 しかし、それは、あくまで可能性であって実証されたものでは、ない。 実証されたのは坂東だけだ、坂東は、まだその事に気がついていない 本人達は、そう言う物なのだ。 ただ、俺だけは気がついた。 これが違うと証明するためには、同じ状況をつくらなけりゃならない。 しかし、そんな事は出来ない。 である限り確かめる方法はない、もやもやしてるものは、残るが、やはり限界なような気がする。
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