英美

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これ以上は自分がみじめ過ぎる 愛にもプライドは必要だ。 ほとんどプライドなしで坂東と競いあって来たが、負け際ぐらいは綺麗に行きたい。 そう寂しく思いながら俺はふと坂東だったら、どうするか考えた。 坂東なら、あきらめないかもしれない あきらかに英美が俺の方に愛をかんじたとしても、惨めに、みっともなく愛を、いや愛をえられなくてもまとわりつくのかもしれない そんな気がする。 俺と坂東の大きな違いは、そこだ 俺は英美の愛をえるためなら、人と争う事も出来るし人を欺く事もやれるつもりだ。 しかし英美の愛が他にあるとわかれば、もうひつこくは出来ない。 人の愛まで割り込めない、それが正常な人間だと思うし、それが正しいと思う しかし、それでは世の中にある不倫や略奪愛は全て悪なのか? いや悪だろう、少なくとも正義であるわけはない しかし その全てが許されない事だろうか? いや許されるわけがない しかし しかし しかし 最後に俺の頭に一つの疑問が残った。 命がけで愛していると思っていた英美をこんなに簡単にあきらめられる俺は本当に英美を愛したと言えるのだろうか? わからない、しかし英美が坂東を選んだ理由はなんとなく納得が言った。 しかし、なんとか俺の中では踏ん切りがついたとは言え、これから俺達の関係は、どうなるんだろうか? ただの友達として二人に接する事が出来るんだろうか? 俺は黙って消えるべきなんだろうか? しかし坂東も英美も、もう得難いかけがえのない友人だ。 それでも別れなければならないのか? それがモラルなのだろうか? モラルって何? 自分の全てを否定する事もモラルなのか? 俺は今まで、その事を一度も考えた事は、なかった。 どちらが正しいか、もしかしたら客観的な基準はないのかもしれない 『愛とはけして後悔しないこと』 人は人生で選択を迫られる時がある モラル(社会)をとるか 自分の人格の肯定(愛)をとるか どちらを取るかで人間の個性が少し別れる。 俺は前者なのだ、そしてやがて当たり前に前者を選ぶような気がする。 それに疑問を持った事もすっかりわすれて、一度人間は自分を裏切る覚悟ができれば後は生涯自分を裏切る事が出来ると言う 一度モラルを裏切れば生涯モラルに無理矢理従わされてると言う被害者意識が生まれる。
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