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病院の庭を、何か方法がないかとぐるぐる回ってると、思わず立ちどまった。
英美と目があったのだ。
英美は個室から外を眺めていた。
思わず俺は近づこうとした。
すると英美は、まわりをキョロキョロ見て自分の服を摘まんでから遠くの方を指さした。
そこには
♪広がる未来に夢が溢れてる
家族を思えば頑張れるはずさ
つまりワークマンの巨大看板がたっていた。
英美は頭が回る
あそこには白衣の作業着が売ってるのだ
上に羽織ってしまえば医師や検査技師の白衣と簡単には区別がつかない。
まあ、こんな事まですればいいわけきかないだろうし、通常なら、ここまでやらなくても面会時間以降侵入する事は可能だ。
しかし英美の事務所は神経質になっていて看護士に、それなりの手配をしてる可能性だってある。
用心に用心を越した事はない。
俺は、いかにも病院関係者に見えそうな白衣を買って車で着用した。
そして警備室が横にでんとある時間外出入口に入った。
詰めてる警備員は俺が来ても反応しなかった。
なるべく平成を装い俺は警備室の横を通過した。
これで病棟内に侵入して英美に会う事が出来ると思った瞬間。
「ちょっと貴方」
ギクっ
ばれたか?
老警備員が手招きしていた。
なんて言い訳しよう
白衣まで着てるんだから家督不法侵入で警察に通報されるかもしれない
おずおずと来た俺に警備員は言った
「仕事中だからって知らんぷりは、ないだろう」
そのなれなれしい口のきき方から俺は気がついた。
どうやら職員の誰かと俺を勘違いしてるらしい。
見るとかなりの年輩の上に牛乳瓶の底のような丸眼鏡を掛けている。
俺は態度を決めずに守衛に近づいた。
こうなったら、相手の間違いしだいで人物になりすましてやろうと思った。
ばれればつまみ出されるし、ここまで来たら何とか入りこみたいと言う気持が強かったからだ。
守衛と接近しても守衛は一向に気がついた様子は、なかった。
「昨日の第3レースくるとは思わなかったな」
「そ、そうですね」
「いや~久しぶりについたな」
「ハハハおめでとうございます(なんのこっちゃ)」
「と言う事で、出せよ」
「へっ」
「とぼけるなよ、代わりに船橋行ってくれたんだろう」
ボートか
「で何を」
「配当だよ、がめるつもりか?」
「そんな、いっいくらですか?」
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