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「武勇伝」
「私はもともと、ここの内科部長だったんだ
フィリピンホステスと妻の板挟みに苦しみホステスをやって懲役20年食らって刑期半分で出てきて、かつての部下に頼んで守衛で雇ってもらったってわけだ
思いだしたくないもんだ若さゆえの過ちを
フフフ」
「(武勇伝って言うより犯罪履歴だろうが
それに若さゆえって、もう分別つく年だったろうが
若さゆえの過ちで殺されたらたまらねえわ)」
「しかし最近はステロイド系ハリウッドスターがバンバン崩れてるな、」
「ステロイド使い過ぎには注意しましょう」
「人間やめますか?
ステロイド止めますか?」
「違法でないだけ厄介だよな、やっぱり法律で制限しないとダメなのが、いるんだよな」
「さすが法律を破った人間の言う事は説得力ありますな」
「…・」
「もう行ってよろしいですか?」
「地球の果てまで飛んで行け」
「(怒らしてしまった)」
俺は追いやられるように病棟の中に入った。
この前来た時は、それどころじゃなかったので、今始めて来たような新鮮さを感じた。
わりと新しい鉄筋の建物の中は、どこの病院でもそうであるように、各部屋を廊下でつなぎ、その廊下の左右に部屋がたち並んでるシンプルな間取りだった。
少し歩くと交差点に相当するちょっとしたホールにぶつかった。
ホールはエレベーターホールも兼ねていた。
この病院には、ここともう一つエレベーターホールがあった。
別にエスカレーターと階段もあった。
私はどれを利用するかで迷った。
何故迷ったか
実は外から見たか英美の部屋が中からどこに相当するかわからなかったのだ。
英美の部屋番号ももちろん教えてもらってないし、いくら大規模とまで行かない個人病院でも病院となるとそれなりの広さがあったから、一つヘタな場所に出てしまうと英美に簡単には辿りつけない
それよりあんまりうろうろするとあましまれてしまう
ナースステーションに聞きにいけば、もっと怪しまれるし、あの犯罪履歴に金でも渡して頼み込むか?
欲望には弱そうだし、前後の見境がつかなくなるのはたどって来た人生で既に証明済みだ 。
いや、不味い英美が女優だって知ってるだろうからエピソードとしてマスコミに売りかねない
欲望に弱く見境がつかないのは解りきってるからだ。
英美に後で迷惑がかかる事はしたくない
しかしここまで来てあきらめるのは嫌だった
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