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……雨の匂いだ。
……遠くまで重く垂れ込めた、灰色の空。
……そして、暗い空気。
「………」
だだっ広い、荒野の中。
ただ歩いてるだけなのに、こっちの生気まで吸い取られちまいそうだ。
正気を保とうとすればするほど、鬱っぽくなりそうだ。
「……重てぇ」
腰に据えている剣が、重く身体に圧し掛かる。
そう…これまでに背負ってきたものと一緒に、一気に覆い被さってくるかのように。
「………かったりぃなぁ……」
空気と一緒に、何か鬱陶しいものもまとわり付いて来ているような気がした。
それこそ、気ぃ抜いてたらどっかへ一緒に連れてかれちまいそうだ。
「……(…そんなん、御免だ)」
軽く、頭を振る。
そのまま、全てを振り払うかのように。
何もかも、全てから逃れるかのように。
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