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放課後になり、プリントを持って準備室に訪れた。
「……」
「ごめんなさい……」
そこで床に散らばった教材やプリントをかき集めている葛城を発見する。
「そういえば、用務員さんが壊れてるけどまだまだ使えそうな戸棚があるって言ってたような……」
葛城と共に散らばった物をまとめ、実際に準備室を見てどう整理するかを考えているところ、葛城がいい情報をくれた。
「見て使えるかどうか確認しましょう」
かくして用務員室に向かうと、用務員のおじさんが快く見せてくれた。
「乱暴な子が多くてね。直せるもんなら直すんだけど」
外観はまぁ……目をつぶるとして、中もひん曲がってて出っ張った所で怪我しそうだが、取ってしまえば使えなくはない。
「コレ、物理準備室に下さい」
元々この戸棚の対応に困っていたらしい用務員のおじさんは葛城と一緒にすぐ準備室の方へ運んでくれた。
「いやー、いい生徒さん持ったね」
「はは、掃除の鬼ですけど」
「ほら! 先生も棚掃除するの手伝って!」
あたしは運良く手に入れた戸棚を嬉々として見上げる。
これで整理がはかどり、コストも減る。
まず、中のひん曲がった棚部分を外し、用務員のおじさんから借りた金槌を使って外観を許せる範囲にまで直した。
戸の立て付けには問題もなく、掃除もスムーズに進み、昨日より早く終わった。
「それじゃあ、ここにある教材とか入れてっちゃっていいかな?」
葛城が今日散らばらせた教材やプリントなどを取り出すが、もちろん答えは……
「ダメ」
「エッ!?」
葛城のことだ、資料を無造作に入れて、また出す時どれかわからずに全部取り出すことになる。
それでは意味がない。
「はい、コレ」
今日、荷物や課題と共に持ってきたのは、昼休み返上で買ってきた資料整理用のファイルやボックス。
「まず、教材かプリントか分けて下さい。それからさらに年代や区分別など、シールも買ってきましたからちゃんと書いて貼りつけて下さい」
それと、ファイルやボックスにそれぞれの中身がわかるようにするためのシールとペンも買ってきた。
あと、これも忘れずに言う。
「ああ、もちろん領収書は忘れてませんからね」
あたしは葛城の冷や汗混じりの苦笑いに向かって、にっこりと微笑んだ。
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