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「白線送りって知ってる?」
卒業も間近に迫った三月初旬。唐突に親友の可奈子から訊かれた。
知らないと答えると、可奈子は呆れたように溜め息を吐いた。
「これだからシズは……白線送りっていうのは我が百合女に伝わる恒例行事の一つよ」
百合女とは私と可奈子が通う、私立百合ヶ丘女学院の略称だ。
「恒例行事?」
「そう、恒例行事。シズも見たことない? 卒業式の後に、コレを送りあってるの」
コレ、といって可奈子は制服に付いた白いリボンタイをチョコンと摘まんでみせた。
そういえば、去年も一昨年もそんな風景を見かけたような気がしなくもない。
「あれはね、ずっと一緒にいようって誓いを交わしてるの。ほら、中学の時とか第二ボタンをもらってるのとか、あんな感じで」
といわれても、私は初等部から此処にいるので共学の学校の事なんて分からない。ともあれ、白線送りとは親しい友人同士でタイを交換するものらしい。
初等部からこの学校に通っているのに全く知らなかった。
「初等部や中等部ではやってなかったよ?」
「当たり前じゃん、進級して新しく入ってくる人はいても、そうそう他の学校に進学しようなんて人はいないでしょ?」
それはそうだろう、わざわざ他の学校を受験しなくてもエスカレーター式に中等部、高等部へと進めるのだから。
「でも、高等部の卒業式は違う。大学、専門学校に行く人もいれば、就職する人もいるわけでしょ? 仲が良くても離ればなれにならなきゃいけない、だから、離れてても仲良しだよっていう証なの」
そう言った可奈子は何処か淋しそうで、泣き出してしまいそうだった。いつも元気な娘だけに、その様子は私の胸に鋭い痛みを与えた。
そして、卒業の日はやってくる。
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