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「可奈子」
「あ、シズ……」
可奈子は泣きはらした眼で私を見上げてくる。
可奈子は県外の専門学校に進学、私は県内ではあるが、少し離れたところにある短大に進学を決めていた。
「可奈子……白線送り、しよっか?」
「シズぅ……」
加奈子の瞳に浮かぶ涙を見て、私もつられて涙目になっていた。
私は自分のセーラー服の襟に手をかけてタイを抜き取る。
「はい可奈子、ずっとずっと、大好きだよ」
「わ、私も! ずっとシズが大好きだから! ……だから、私の事、忘れないでね?」
「忘れるわけないじゃない」
そう言って私は可奈子を抱き締めた。私の腕の中で少し震えた可奈子が微かな嗚咽を漏らす。
そんな可奈子が愛しくて、私も少し泣いて、桜の雨が降りしきる中、二人で静かに泣き続けていた。
「白線送り? シズやったの?」
「うん、お姉ちゃん知ってるの?」
「まぁ、アタシも一応百合女に通ってたからね」
「やった?」
「まさか」
「なんで?」
「あれ、好きな人に想いを伝えるってやつだよ? アタシは彼氏いたからね」
「え?」
「じゃあ、アタシはこれから夜勤だから、お幸せに~」
「あっ、お姉ちゃ…………全く、可奈子ってば……素直に言ってくれれば良かったのに……」
今度会ったらどうしてくれようか、そんなことを考えながらも、私は口元が弛むのを抑えられないのだった。
fin
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