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「さ、坂崎さん……?」
恐る恐る口を開いた私を見て、坂崎さんは大きなあくびをした。
そのあと辺りを見回すと、一言。
「ここ、何処?」
「と、図書館です」
反射的に返した私を焦点の定まらない眼で見ながら、坂崎さんは呟いた。
「……そっか、寝ちゃったんだ……」
「あの……坂崎さん?」
「…………って、土居さん!?」
図書館では滅多に聞くことのない大声に、私は身をすくませる。そんな私を見て彼女は急に慌て始めた。
「あ、違うの! 今のは恐がらせようとしたとかそんなのじゃなくて、急に人が出てきてビックリしたというか!」
何故か必死な様子の彼女を見て、つい笑いが込み上げてくる。
対する坂崎さんは、何故笑われているのか解らなくて不思議そうな表情を浮かべていた。
「あ、あの……土居さん?」
「あ、すいません、つい……」
そう言って謝ってみるが、また笑いが湧き出てくる。
「土居さん、大丈夫?」
「すいません、坂崎さんの必死な様子が何だか可笑しくて」
私がそう言うと、坂崎さんは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「わたしの名前、覚えてくれてたんだ?」
「? はい、クラスメートですから」
私はクラスメートの名前と顔が一致しないほど物覚えが悪い人間だと彼女に思われているのだろうか? ちなみに物覚えは悪い方ではない、成績もどちらかといえば良い方に入る。
でも、彼女の事を覚えたのはそれだけでなく、彼女に憧れているのが理由だ。
活発で明るく、社交性に富んでいる彼女は私とは正反対で羨ましくなる。
「……そ、そっか、そうだよね、クラスメートだもんね……」
「珍しいですね、図書館に来てるなんて」
せっかく始まった会話が終わるのも寂しいので、私は気になったことを訊いてみた。
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