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「東城って、いつもあんなんだよなぁ……」
ここは人類発祥の地とも言われるシェルミア王国の首都から少し離れたエノンという街にあるクレアクレウズ学園の中等科一年A組の教室。
一人の男子生徒が、ぼーっと自分の席から、つまらなさそうに窓の外を傍観している東城 聖[トウジョウ ヒジリ]を見ながら言った。
聖は相変わらずの無口無表情。かつ、授業中は寝てばかりで勉強も運動もダメダメないわゆる落ちこぼれ。「避けられる条件」を備えた聖を、皆無視しようとしている。
男子生徒の隣にいたもう一人の男子生徒が声を潜めながらこう言った。
「確かに。でもよー、東城って意外に可愛くね? 下手したらそこらへんの女子より可愛かったりして」
そう聖は男だが女の子よりも可愛い顔をしているのだ。
さらさらとし肩にかかる程度まで伸ばした焦げ茶色の髪。小鹿のようにクリクリとした愛くるしい蜜色の瞳。そして華奢な体──。
パッと見た感じでは可愛らしい女子生徒にしか見えないのだ。
「わかるわかるー。もう少し笑えばいいよな?」
「俺も思う。でもよーっ、やっぱ何事にも興味を示さない、周りと関係を持とうとしない……さっみしー」
男子生徒たちはそういった会話をしながら、教室を出た。それを確認した聖は静かに立ち上がり、教室を出た。
「……あれ。東城は?」
金髪の長い髪をツインテールにした活発そうな少女が近くにいた女子生徒にそう問いかける。
「東城? 知らないけど……また、授業抜け出すんじゃない?」
「あーっ、いつもそうだもんね、東城って」
「あの野郎!! 今日という今日は許さないんだからぁあ!!」
少女は手にしていたノート類をバンッと女子生徒たちの机の上に置くと、急いで教室を後にした。
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