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聖は白い階段を早足で上っていく。
聖が行こうとするのは学園の最上階にある屋上。本来なら立ち入り禁止なのだが聖は何故か鍵を持っている。
聖は屋上の扉まで辿り着くと、どこからか鍵を取りだし、ガチャンと扉を開けた。
ギィギィ……と嫌な音と共に、聖を受け入れるような優しい風が吹く。
「……今日も来ましたよ」
屋上には誰もいない。とても静かで寂しい空間だ。
しかし聖にとっては最高の空間であった。
誰もいない方が、揉め事や争い事といった面倒臭い事に巻き込まれなくて済むのだ。そして静かに平和に過ごせるのだ。──聖にとって平和に過ごす事は“希望”なのである。
「……ふふ。ありがとうございます。ホント、ここは平和です」
端からだと独り言を言っている変な人にしか見えない。しかし聖は違う。
聖には小さい頃から不思議な力があり、小鳥や雀といった動物たちは勿論、風の妖精たちとも会話が出来るのだ。
「ふぅ……疲れたよ」
聖はフェンスに寄りかかると、綺麗に澄んだ大空を見上げてため息をついた。
上にはどこまでも続き、色んな表情を見せる空。下には昼休みとあって馬鹿みたく、はしゃいだり遊んだりする生徒たちのやたら高い声。
しかし聖にはどうでもよかった。興味を持てるものも少なければ、周りの人間との関わりさえ拒否する悲しき人間なのだから──。
「……俺なんて、生まれなければよかった」
悲しそうに呟く聖。
その時だった。突然、勢いよく、普段じゃ開かれる事のない屋上の扉が開かれたのだ。
「……!?」
「こぉぉらぁぁ!! 東城ーっ」
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