Episode01

3/15
前へ
/18ページ
次へ
 聖は白い階段を早足で上っていく。  聖が行こうとするのは学園の最上階にある屋上。本来なら立ち入り禁止なのだが聖は何故か鍵を持っている。  聖は屋上の扉まで辿り着くと、どこからか鍵を取りだし、ガチャンと扉を開けた。  ギィギィ……と嫌な音と共に、聖を受け入れるような優しい風が吹く。 「……今日も来ましたよ」  屋上には誰もいない。とても静かで寂しい空間だ。  しかし聖にとっては最高の空間であった。  誰もいない方が、揉め事や争い事といった面倒臭い事に巻き込まれなくて済むのだ。そして静かに平和に過ごせるのだ。──聖にとって平和に過ごす事は“希望”なのである。 「……ふふ。ありがとうございます。ホント、ここは平和です」  端からだと独り言を言っている変な人にしか見えない。しかし聖は違う。  聖には小さい頃から不思議な力があり、小鳥や雀といった動物たちは勿論、風の妖精たちとも会話が出来るのだ。 「ふぅ……疲れたよ」  聖はフェンスに寄りかかると、綺麗に澄んだ大空を見上げてため息をついた。  上にはどこまでも続き、色んな表情を見せる空。下には昼休みとあって馬鹿みたく、はしゃいだり遊んだりする生徒たちのやたら高い声。  しかし聖にはどうでもよかった。興味を持てるものも少なければ、周りの人間との関わりさえ拒否する悲しき人間なのだから──。 「……俺なんて、生まれなければよかった」  悲しそうに呟く聖。  その時だった。突然、勢いよく、普段じゃ開かれる事のない屋上の扉が開かれたのだ。 「……!?」 「こぉぉらぁぁ!! 東城ーっ」  
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加