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少女の怒りのこもった叫び声。扉から離れた場所にいた聖にもその声はよく聞こえた。
「あっ。東城はっけーんっ!!」
少女は聖を見つけると聖のもとに駆け寄る。
「ちょっとー、東城?」
聖の背後で少女の声がする。聖は面倒くさそうに振り替える。そこには先ほど、教室で聖を探していた金髪のツインテールの少女がいた。
少女は聖を睨み付けているようにも見える。
しかし当の聖はやはり無表情であった。
「……あなた、誰ですか?」
抑揚のない淡々とした声。少女はその声に少しビクッとするも、すぐにハッとなり「誰ですかじゃないわよ!」と聖を指差した。
「……?」
「同じクラスの人の名前も覚えられないわけ!?」
「……興味ないですし」
「興味なくても覚えなさいよ」
少女の言うことに、聖はめんどくさくなったのか、その場から離れようとする。しかし少女はそれを許さなかった。少女は聖の腕をギュッと掴み、「人の話を聞きなさいよ」と言った。
「……俺に関わらないでください……」
「私だって関わりたくないわよ!! アンタ、いっつも黙ってて無表情だし……誰とも関わろうとしないしっ。委員長じゃなかったら話しかけなかったわよ!!」
少女は息を切らせながらそう叫ぶ。そして言い終えてから気がついた。──この言葉で聖は傷つかなかったか、と。
恐る恐る少女は聖を見る。
聖はパッと見たらいつもと変わらぬ無表情に見える。しかし、少し悲しそうにしていた。
「あ……その。ごめん……」
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