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少女は反省しているのか下を俯きながら言う。
「……別に。気にしてないですから」
聖はそう言って、パシッと少女の手を叩く。──その表情はやはり悲しそうだった。
「……名前。名前、教えてくれないと呼べない」
いきなり聖の方から話しかけられ、驚く少女。少女は慌てながら「神崎 陽[カンザキ ヒナ]よ」と答える。
「……ふぅん」
自分から聞いたくせに興味なさげに返す聖に陽はムカつく奴……と感じる。
「そうだ私、アンタに用があったんだったーっ。東城! 国語の自作小説!! 今日までなんだけど、アンタ出してないでしょ?」
陽が怒鳴りながら聞くと、聖は「あぁ、あれですね」と呟く。陽は聖を睨み付けながら「まさか忘れたの?」と聞く。
「……机の中」
「へっ?」
「机の中に入ってます、勝手に抜いといてください」
聖はそう言うと陽の横を通りすぎて、屋上から出た。
陽はそんな聖の寂しそうな背中をしばらくじぃっと見ていた。
「……東城……?」
*
「……聖ちゃん。元気ーっ?」
四階にある応接室。
聖はそこに向かっていた。その途中、後ろから声をかけられる。聖はその声を聞くと、嫌そうにため息をつく。
「なんだよ、聖ちゃん。そのため息はー。てかまた聖ちゃん、サボり?」
「……煩いです。黙ってください……」
聖はそう言うと応接室に入り、何故か備え付けられているベッドに横になる。聖に声をかけた少年も聖に続いて応接室の中に入る。
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