始まりの刻印

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 ここはこの国の首都ヴェイル。  北の方にはセントフィリア城という大きく綺麗な城が聳え立っている。  東、南、西のそれぞれの奥には城下町と外を境に門が立っていて、容易には侵入できないようになっている。  このヴェイルはとてつもなく平和だ。  他国との争いは全くない中立国だから……というのもあるが、一番の理由はこの国の治安を全て、有能な騎士達に任せている為だ。  その騎士達を育てる為か、騎士育成学校の数が異常に多いのも特徴的だ。  何故、この国には騎士に関するものが多いかというと、この国にはある伝説があるからだ。  昔、国を潰そうとする組織がヴェイルを襲いかかった。  国の騎士達が全員でかかっても止められないような戦力だった。  ヴェイルにいた国民は逃げ惑い、虐殺され、自分達の不幸を恨んだ。  そんな時だった。  たった1人、この国の王を護るべき騎士が組織に立ち向かった。  本来ならば王だけを護るのが仕事であるのに、彼は『自分は国を護る騎士だ』と、声を張り上げて組織に向かっていった。  1500人もの戦力にたった1人で立ち向かっていったのだ。  誰もがダメだと思う。  だが、彼は1500人もの戦力をたった1人で打ちのめし、見事に凱旋を果たした。  しかし、その凄まじい戦闘の巻き添えを喰らった国民と、その騎士が護るべきだった王が死に至った。  組織の目的は王の殺害だと報道されたが、本当はどうなのかわからない。  そしてその騎士は20歳という若さで、王を守れなかった為に死罪となった。  だが、それによって救われた人々は彼を称え、この伝説をこの首都ヴェイルの上空から見た形をつけて゛Cross Knight゛(クロスナイト)と呼んだ。  それからクロスナイト伝説という伝説が、現在のヴェイルに伝えられているのである。  この伝説に憧れてヴェイルの騎士になる人が増えているから、今のヴェイルには騎士に関するものが多いのだ。  その称えるべき崇高なヴェイルの騎士の中で最近、゛ある噂の騎士゛が現れたという話をよく聞くようになった。  それが、これから世界を巻き込む壮大な事件をもたらす者だということを、今は誰も知らなかった。
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