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引き抜かれた光は大剣へと姿を変えて、男の両手に握り締められる。
「おぉ……エグいの持ってんじゃねぇか……!」
「試合開始まで3秒」
男の握る剣は、見るだけで怯えてしまう輩が多いと有名だ。
赤黒く輝くその剣は、常に血を浴びているかのようだ。
斧を持った男は剣の種類を知っているらしく、顔色が悪い。
『試合開始!』
ホイッスルの音がアリーナに響き渡る。
それと同時に、斧を持った男は地面を蹴って宙へと跳んだ。
「その剣……お前が噂に聞いた゛ブラッドナイト゛か。確かに血の色をしているな。剣も、その両目も」
斧を宙から地面へ突き刺すような形で、紅眼の男に襲いかかる。
「くっ!」
「聞かせてくれよ。ソイツは本当に……敗者の血を吸っているのか? 噂ではそう聞いていたんだが……」
激しい金属のぶつかる音がアリーナにこだまする。
「それはない。これは聖剣だ」
「なら噂はただの噂に終わったって事か……本当なら欲しかったんだがなぁ!」
斧を振り回して砂塵を巻き上げ、辺りの視界を悪くした。
少し考え、斧の能力だと気づいた時には先手を取られていた。
「遅いな! そんな剣で何が出来るんだ? 能力を俺に見せてみろ!」
常に舞い上がる砂塵の中から斧が飛んでくるせいで、回避が困難だ。
そんな中、男は砂塵の中で剣を振り回し始めた。
「何をするつもりかわからないが、息の根を断てば同じだ!」
アリーナに広がる砂塵の台風の真ん中で、男は斧を思い切り振り下ろす。
だが、砂塵の舞い上がる勢いは、だんだんと下がってきていた。
「な、何故砂塵が落ちていく!?」
やがて、砂塵は勢いは完全になくなって、アリーナ中に降り注ぐ。
さっきまで剣を振り回していた男は、剣を握りしめて構え直していた。
「お前と反対方向に剣を回転させただけだ」
「そんなことが……!?」
「勿論、少し能力を使った」
黄色い斧を振り上げて、男に向かっていく。
剣で受ける体勢になって、剣と斧がぶつかる衝撃に耐える。
「本番はこれからだ!」
また、力強く地を蹴ってぶつかり合う。
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