6人が本棚に入れています
本棚に追加
斧と剣が弾かれ合って、少し距離を置くようになった。
斧の男は地面に斧を突き刺し、地に赤い刻印を刻んだ。
「7つの星に刻まれし魂よ……散れ!」
輝く光が斧に宿り、辺りに衝撃波のようなものが飛んでいく。
アリーナの壁が衝撃波に当たって、瞬く間に崩れていく。
「この衝撃波……゛ダストウェーブ゛か!」
武器の能力に気づいた男は、少し身を低くし、構え、衝撃波を避ける。
アリーナ中に衝撃波の傷跡が広がる中、特別席では椅子に座る美少女と少し老いている使用人が、静かに試合を観戦していた。
「あの衝撃波で広場に傷をつけられたってことは間違いないわね」
「姫、斧を持った男……名を゛キルノア=ペンラッド゛といって、有名な貴族の出になりますね。そして、見たがっていた剣を持った方の男が……」
使用人は言いかけて止まる。
いや、正確にはリストに載っている男を見て驚いたのだ。
「あの男が何?」
「育成学校を僅か2年で……しかも首席卒業しています! 16歳で卒業した史上最年少の騎士で、名は゛セルク=セイクリッド゛です」
「セルク……か」
ドレスの生地をギュッと握りしめて、含みのある笑みを見せる。
使用人はそれを見て、また何かしでかす気かと心配になる。
心配になりながらも口を開かず、激しい試合を見続ける。
「おらおらぁ! 防戦一方かぁ!?」
「くっ! 仕方ない……」
セルクは持っている大きな剣を光に戻し、消失させた。
その後、すかさず腰にある鞘を握りしめ、構える。
「心配するな。戦慄、絶望、慟哭……どれも一瞬しかわからない」
(なんだ……あの妙な構えは一体……?)
キルノアは考えた。
が、考えたのが遅かった。
セルクは荒れ狂う衝撃波を避けては、一歩ずつ確実に踏み出してキルノアに近づいていた。
距離は約2メートル。
「くそ! いつの間に!?」
「゛cross saber゛(クロスセイバー)」
セルクは剣の名を呼び、鞘から思い切り引き抜いた。
現れたのは、とてつもない存在感を持った蒼く輝く綺麗な刃。
名前の通り、剣は十字架を象っている事が形でわかる。
最初のコメントを投稿しよう!