傍らにあるモノ

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「と言うか、友春。なんでウチに入り浸ってるんだ」 「大学に近いから」 「家賃払え!この滞納者!」 一人暮らしにしては広い1LDKの部屋に二人はいた。家主などどこ吹く風といった風にベッドに寝転がる友春に、机に向かい合ってレポートのラストスパートをかける葉倉。レポートが残っている葉倉にとって友春は邪魔でしかない訳である。 「僕はまだレポートが残ってるんだ。今日くらい、ハムスターのように静かに大人しくしておいてくれ」 「何を馬鹿なことを。いつだって俺は静かじゃないか」 「じゃあテーブルの上にある酒は海に帰してやる」 「俺の血と汗と涙の結晶があああっ!」 まあ、間違っちゃいないけどさ……。何も泣きながら腕を掴まなくても。 と言っても、この光景にも慣れた。高校からの付き合いであるこの馬鹿とはたかが三年ながら、腐れ縁を感じさせるには充分な年数と言えた。 「たまには家に帰ってやれよ。ご両親が心配するぞ」 「問題ねぇよ。お前んとこって言ったら即オーケーが出るさ」
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