傍らにあるモノ

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「で、友春は次、何の講義を受けるんだっけ?」 「あん? 教えてなかったっけ?」 「教えては貰ったと思うけど……まだ履修したてだろう? 自分の講義と被って混乱しちゃうんだよ」 「ったく……。 相変わらずと言うべきかな、この研究バカめ」 「うるさいこの飲んだくれ。 僕の部屋に置きっぱなしの荷物を早く持って帰れ。 スペースが無駄にとられちゃうじゃないか」 無駄口を叩きながら第一号棟へ僕等は向かう。 第一、第二、第三号棟の三つの棟から成るこの辺りは主に講義室が集まっている場所だ。 丁度『コ』の字を描くような形で並んでおり、丘の上に建っている、近代的なデザインが印象的な新築校舎である。 そんな大学に通う僕の名前は葉倉 白久(ハクラ シロヒサ)。 この西園大学の一回生だ。 何の変哲もない、だが夢はある、何処にでもいるであろうしがない学生さ。 「おい、白久。 次、お前の大好きな講義じゃなかったっけ?」 「え? あ、ホントだ!! じゃあ僕は先に行くから、また後でね友春!!」 友春に別れを告げ、急いで教室へと向かう。 遅刻する訳にはいかない。 だってこの講義は僕の大好きな―――“神話”の講義なんだから。
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