傍らにあるモノ

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「だから僕は宣言出来る……。 ―――あなたの理論は間違っていると!!」 「……いい度胸だ、葉倉……!! 毎度ながら、お前ほどに肝の座った男は他にいないと、私は常々思う……ッ!!」 部屋に入ってくる風に揺らめく黒髪が何故だか角のように見えてしまう、この教授。 僕が受講している神話の講義を担当している名倉 理恵子(ナクラ リエコ)教授だ。 スラリとした体格に、出ている所は出ていて引っ込むべき場所は引っ込んでいる、という女性なら誰しも羨むような容姿をしているこの人は、男女問わずこの学校の人気者である。 また、若干23才で博士号を取得する、などといった人間離れしたこともやってのける才女でもあったりする。 もっとも、性格に関しては厳しい面があると僕は思っているが。 そして、そんな教授と僕の関係はと言うと――― 「正しいと思った事を言っているだけですから。 臆する必要も特にないと思います」 「お前はホンットーに、人の神経を逆撫でするのが上手だな……!」 「ははっ。 いやだなぁ、誉めたった何もでませんよ?」 こんな感じの、実にギスギスした関係だったりする。 他の生徒には間違ってもこんな事を言ったりしないのに、僕にだけこんなにツラくあたるなんて。 全く、教育者として恥ずかしくないのだろうか。
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