お人形の夢と目覚め

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愛してしまったの 愛してしまったの だからお願いこのまま 君の中で疼くもってしまえれば どんなに、どんなに幸福でしょう 愛して絞まった罪は如何様 愛して締まった柘榴の実を一抓み ああ、人の味がするわ ああ。これがイヴの食べてしまった果実の味なのでしょうね 世界が林檎色に染まった日 涙はきっと葡萄色 橙みたいなお天道様一粒 摘んで、食べて、世界に ばいばい おやすみ、また逢うことはないけれど 今日の私はきっと柘榴 君を愛してしまった柘榴の実一粒 スカスカの実の中一粒、柘榴の実 他の柘榴は私が食べてしまったの君の知らない間に 君の知らない間に、君の視界はきっと変わったはずなのに 相変わらず、相変わらず、君は私を視界に入れたりはしないのですから 君は賢いです、だから、わかるのでしょう わかるのでしょう 愚かなことに わたくしのこころに わたしは玩具ですから こころを持ってしまったのが悪いのです だけど君を愛してしまったの だから泣いているの、鳴いているの、ないているの 気づかなくてもいいの 思ってるだけでいいの だけどそんなの奇麗事なの だけどそんなの勇気無いの 馬鹿なの、馬鹿なの、知っているわ 私は玩具、どうせ玩具 だけどだけどで固められて 今日も夜中に玩具箱の中 君を幾年も見ずに待っている 一途といえば聞こえはいいけれど 私はマペット、あなたの下僕(しもべ)
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