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俺も多分そうだったんだと思うんだけど、と高木くんは次のように残酷な言葉を僕にぶつけた。
「グループ離れてみて気づいたけど、はっしーと付き合ったのは多分ただの気の迷いだったんだと思う」
「あのときは俺もどうかしてたっていうかさ。はっしーはまだ小学生で女の子みたいに可愛かったから、流されたのかな多分」
「一応キスくらいならできたけど…俺はお前とヤリたいとか全然思わないし」
高木くんは眉間に皺を寄せながら、顔を歪ませて笑った。よく悪口を言っている時にみんながするような、そんな嫌な表情だった。
「…はっしーだって本当は、俺より女の方が好きだろ?」
高木くんの声は僅かに震えていた。
それを聞いたとき、頭の中で何かが切れた。いっきに高木くんへの憎悪が爆発したのが分かった。
バシッと鈍い音が空気を割る。
すぐあとに、ガンッと大きな音が続いた。
僕が高木くんを殴った拍子に、彼は頭をベッドサイドにぶつけてしまったらしい。小さく呻き声を上げてベッドに倒れ込んでいた。
「はっしー…?」
殴られて赤くなった頬を抑えながら、高木くんは呆然と僕を見つめていた。
はっしーがこんなことするなんて、って顔をしてる。うん、僕も今の自分に驚いてるよ。
「…俺は本気で高木くんが好きだったよ。あの時も確かにまだ子供だったけど、それでも真剣に考えて告白して…」
怒りで声が震えたのなんて初めてだった。
自分が思ってたほど高木くんに愛されてなかった。
一世一代の告白も子供の恋愛ゴッコと片づけられた。
何より、彼にとって僕は簡単に切り捨ててしまえるような存在でしかなかった。
悔しくて悲しくてたまらない。
それなのに、まだ僕は高木くんを嫌いになれなかった。
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