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衝動に任せて高木くんの胸倉を掴むと、「やめて!」と小さく叫ばれた。
「お願い、もう顔は殴らないで!せっかくデビューするのに、仕事できなくなる…!」
高木くんはまた僕に殴られるとでも思ったのか、顔を両手で庇ってそう懇願してきた。
「見えないとこだったらいくらでも、はっしーの気が済むまで好きにしていいから…」
すっかり怯えていて今にも泣きそうな高木くん。
4つも年下の僕に今は力で勝てないことを悟ったようだ。体の力を抜いて歯を食いしばっていた。
殴るのはやめよう。その代わり、もっと酷いことしよう。
僕の中にあるよく分からない凶暴な気持ちが、目を覚ます。
高木くんが好きで好きで仕方がなかった。大好きで大好きで、大切過ぎて。想いが通じ合ってからも、ろくにキスもできなかったのに。
なのに、今は高木くんをメチャクチャにしたい気持ちでいっぱいだ。
僕達はもうあの頃には戻れない。
それならいっそ、全部壊してしまおう。
恐怖でもいい。高木くんに僕の存在を刻み込みたい。
僕達の結末にハッピーエンドはない。
それならもう、バッドエンドでいいと僕は思った。
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