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震える唇から嘘を出した。
ペラペラと嘘を。
薮を傷つけるために。
だって仕方ないじゃない。
俺らは愛し合っちゃいけないんだもの。
そうゆう環境の中の人間なんだもの。
本当は愛しくて、どうしようもないくらい愛してるのに。
周りはそれを許してはくれない。受け入れてくれない。
軽蔑するだろう。
ただ、好きになったのが男だった。
ただそれだけのことなのに、周りは俺らを傷つける。
薮の腕がそっと俺から解かれて、身体は離れた。
涙で濡れた薮の顔。
潤んだ瞳で俺を見つめた。
愛しい愛しい。
どうしようもなく愛している。
「…嘘、つかないでよ」
「…え?」
「好きじゃないなんて嘘、つかないで…」
薮はまた、ボロボロと涙を流して俺に抱きついた。
「光は俺を愛してるよ」
「…薮?」
「光は俺にいつも本物の愛をくれるよ?」
「……っ、」
「薮がいてくれれば、他は何にもいらないって言ってくれたよ?」
「薮っ…」
「一生離さないって…っ、言ってくれたじゃんかっ…」
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