さよなら

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すきだよ、薮。 愛してるんだ。本当に。 だから、決めたよ。 「…なぁ、薮」 「んー?」 俺の部屋の、俺のベッドの上で寝転びながら雑誌を読んでる薮を呼んだ。 俺の呼びかけに雑誌から目を逸らすことなく答えた。 薮はなんて言うだろう。 俺が今から伝えることに、薮はどんな反応をするのだろう。 泣くのかな? 泣いて泣いて、やだやだって駄々をこねてくれるのかな。 そしたら俺は、どうするだろう。きっと薮から離れたくなくてしょうがないんだろう。 いや…でも薮のことだから案外あっさりと終わってしまうかも。 そしたら俺…。 一生立ち直れない。 「なんだよ?」 はっ、と顔をあげれば、薮と目が合った。 雑誌じゃなく、俺をみている。 「ひかる?」 なかなか言葉を発しない俺を、不思議そうな顔でみつめる薮。 「薮…」 「ん…?」 言いたくない。 でも…言わなきゃいけない。 決めたんだ。 こうしなきゃいけない。 仕方ないこと。 「薮…、別れよう」 「…え?」 言ってしまった。 まだよかったかな? はやすぎた? いや、そんな事はない。 どっちみち、俺は 薮を愛しちゃいけない。 「…な、んで…?」 こころなしか薮の声が震えているように聞こえた。 薮の顔がみれなくて俺は俯く。 薮は今、どんな顔を している? 多分…泣いている。 「冗談きついよ、ひかる…」 「冗談なんかじゃないよ」 「…っ、なんで…?」 「ごめん…」 「ごめんじゃわかんないよ!なんでいきなり…っ、やだっ!別れたくないっ…」 -
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