そこに居た

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高校一年生。 いよいよ、義務教育じゃない、学校生活が始まる。 あんまり期待はしてないけどね。だって幻滅なんかしたくないもん。 鏡の前でリボンを結んで、ブレザーを羽織る。学年章はついてる。うん、よし。 鏡の中には、可愛いとは言えない顔の私が写ってて、自分を睨み返してる。 自分の事ながら目付きわるいなぁ……。 うっ、なんか跳ねてる。 丁寧に梳いた筈なのに、髪が腰の中間らへんで跳ねてた。あっぶないな……。 急いで霧吹きで直す。 「椎奈ぁ!いつまでやってるの!さっさと降りてきなさい!」 「ねーちゃん、遅刻すんぞー」 母さんと裕貴の声。 うわ、ちょっと遅いかな……。 鞄を掴んで階段を駆け降りる。 今日は、クラス発表の日なんだ。 裕貴から弁当を受け取って、急いでスニーカーを履く。 うちの学校ローファーは禁止なんだって。 紐を結び終わったと同時に裕貴ががちゃっと扉を開けてくれた。 流石、我が弟。 「いってきまーす」 「無理しちゃダメだからね! いってらっしゃい」 「ねーちゃん、いってらー」 気の抜けた弟の声に少々がくっ、としつつ、私は外に飛び出た。 私のうちの前は桜並木になっていて、今は満開。 風が吹くたびに、桜吹雪になっていて、すっごく綺麗なんだ。 学校近辺まで続くそこに沿って、早歩き気味に進む。 丁度凄まじい強風が吹いた。 「うわっ」 豪快な桜吹雪。 思わず腕でガード。 砂が目に入りそうで、私は一回止まって、目の保護に勤しむ事にした。 数十秒して、風は緩やかになった。 そろそろと開けた先に人影が見える。 私の視線が焦点を結んだ瞬間。 君が見えたんだ。
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