そこに居た

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高校最初のクラス発表。 それは、体育館で成された。 最初に全体で挨拶と注意事項を話された後。 黒い布で覆われていた、クラス表が表に出されて、各自確認するように、と言い渡された。 千人位はいるかな……。 多すぎる人に少々押されながら、私は思った。 「うぅ、しぃちゃん。一緒だといいね……っ」 中学からの友達、悠が不安そうに私のカッターの裾を握ってる。 ちっこい彼女は、すぐにこの中に紛れてしまいそうで、私も不安なんだけど。 カッターの裾は止めて欲しいなぁ。 スカートから出ちゃいそうだ。 生徒指導担当と一番最初の簡単な自己紹介で名乗った先生は、スキンヘッドに鋭い眼光で、喋り方も運動部の先生! って感じので、結構怖かったんだ……。 「悠ー。裾はやめてー」 150にも満たない友人に進言したところ、小動物みたいな目で訴えられました。 ……降参。 でも、裾は止めて欲しいので。 「手なら良いよ?」 「ほんとっ? ならいい!」 にこっ、と笑って私に、ありがとって言うと、ちっこい手で私の手を握った。 うー、何か負けた気がするー。 ニコニコと可愛らしく笑ってる悠。 小動物然とした所に絆されてるのかな……。 二人で壁に張られてるクラス発表の紙から自分の名前を探しながら、そう思った。 「三組はないねぇ」 悠が、のーんびりと言った。 私のも無かったから、二人とも無い、って意味らしい。 「なら次行くよ」 「うん!」 すみませーん、と言いながら、三組の人込みを通り抜ける。 「しぃちゃん手痛いよ……」 「はぐれるよりましでしょ?」 しれっ、と言ってみれば、それもそうだねー、と返されたから、よしよしと撫でておいた。
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