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流されそうになっては引っ張っての繰り返し。
悠はその度にゴメン! と言ってきたけど、返す間もなく、またあらー、と流される。
何で、全学年合同でやるかなぁ。
最初の千人はごまかし。
最初空いてたのが、どどっと人が増えてきて、気がついたら、凄まじい人込み。
見れば、一学年、二学年上の先輩がうじゃうじゃいたという寸法。最初の人達は役員さんと準備の人達なんだって……。
周りにはたくさんの人。
あまり嬉しくない状況。
人込みって酔うんだもん……。
「悠ー、次どこだった?」
「六組だよー」
「ん。ありがと」
しっかりと悠の手を握り、私が先導する。
目の前には真っ黒の学ランを来た、背の高い男子ばかりで、少し背伸びをしないと前が見えない。
悠だったら台とか持ってこないと無理なんだろうなぁ。
想像してみたら、中々面白くてちょっと笑ってしまった。
ぽすっ。
「わっ」
黒い物体にぶつかった。
というより、私が一方的に衝突した。
目の前は真っ黒。……学ランだから当たり前か……。
顔をあげれば、うわっ高……。
背の高い、綺麗な人がこっちを見てた。
すっ、としていて、とっても白い。何か羨しい……。
学年章をみたら、1とあって、同じ学年だと分かった。
彼は、首を傾げて聞いてきた。
「大丈夫?」
「うん。ごめんなさい」
「良かった。俺は大丈夫だから謝んなくて良いよ」
最後ににこりと笑うと彼は再び背中を向けて何処かに進んでいった。違和感?
何でだろ?
思い出す、思い出そうとする前に、悠が、私の背中をぱすぱす叩いた。
思考を中断。
んー?と返せば、何故か神妙な声。
「しぃちゃん、大丈夫?」
背の低かった悠には見えなかったらしい。
「謝ってたね。誰かとぶつかっちゃった?大丈夫―?」
私の頭を撫でて、痛くないー?と言って来る。心配してるらしい。
「だーいじょうぶ。心配しなくて良いよ。背中にぽすってなっただけ」
「そうなの?良かったぁー」
一転明るい声になった。
それにほっとなる。
そうだよー、と返しながら歩いていれば、六組の所へ。
周りと同じように上を見上げようと、した。
さっきの男子が目の前にいた。
同じような黒い学ラン。
羨しい位白い。
「あ」
桜吹雪の下の学ランの男の子。
ねぇ。
さっきの君は、何か無理をしてなかった?
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