少し、白が混じった。

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「僕は熊沢遊(くまざわゆとり)。遊ぶと書いてゆとり。女の子みたいな名前だろう?あまり気に入ってないんだ」 母が元気に遊びまわるような健康な子に育ってほしいという願いを込めて付けた名前だった。 僕は病気のせいで遊びまわった事なんてない。 この名前を名乗る度に呼ばれる度に、母の願いを裏切って生きてきた事を実感する。 「そう?キレイな名前だと思うけど…」 「うん。みんなそう言うよ」 勉強も遅れて運動ももちろん出来ない僕が大人達に褒められたことがあるのは唯一、この名前だけ。 苦しくて、悔しくて。 大人達やまわりの誰かにこの名前を『キレイ』と言われる度に狂ったんだよ。 ただ、彼女は盲目のお陰で、僕の『狂気』に気付くことはなかった。 名前だけ珍しくて名前を褒められても、僕が素晴らしいわけじゃなくて僕がキレイなわけでもない。 盲目の彼女は僕の名前を通して、僕の魂をキレイだと言った気がした。 それだけで、僕は彼女に堕ちてしまった。 「また来るよ」 なるべく車椅子の音を出さないように気をつけながら、部屋を出た。
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