白に近づいていく日々

5/8
前へ
/39ページ
次へ
「おはよう、ななみ」 「おはよう、遊」 心臓が痛くて、でもそれでも会いに行った。 「今日は絵本を読んであげる」 「本当!?私、遊の読んでくれる話大好きなの!」 彼女の笑顔のためならば、たくさん話をしたい。 「ある小さな公園に、小さな雪だるまがいました…」 心臓が狂っていく。 それでも。 「小さな雪だるまは小さな女の子に恋をしていました」 今、僕がやっていることに意味がなくても。 それでも。 数分後、ななみからはすすり泣く声が聞こえた。 ななみの役立たずの目から透明な涙が出る。 鼻を真っ赤にして、鼻水をすすってる。 かわいくて、いとおしくて。 心臓がまたぎゅっとなった。 「聞いてくれてありがとう」 「読んでくれてありがとう」 僕はにっこり笑って、また一つ、幸せについて話した。 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加