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その日の夜に、その日あったななみとの思い出を思い返す。
今日も笑ってくれて、
今日も僕の名前を呼んでくれた。
ななみの一つ一つの表情を思い返す。
目に巻いた包帯や、小さな鼻や、可愛い唇や…
白い頬を薄いピンクに染めて嘘偽りのない表情を僕にくれる。
毎日、くれる。
ベッドに横たわりながら白い天井を見つめている。
ふと、視界が曇った。
「…っ」
長袖の腕をそのまま目に当てて、腕を見る。
長袖の布には僕の目と目の距離だけ間隔をあけて、二箇所ぬれていた。
「あぁ…」
自分が泣いていると気付いた。
気付いた瞬間、あとからあとから涙があふれた。
胸があったかくて。
でも苦しくて。
「うっ……あぁ……!」
いつの間にか嗚咽をもらして。
泣いていた。
でも、なぜか嬉しくて笑っていた。
ななみ。
ねぇ、ななみ。
幸せなんだよ。
どうしようもなく。
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